
それは今の下宿に引っ越して一ヶ月ぐらい経ったころの話。
何の変哲もない、普段通りの朝でありましたとさ。
私はバイトに向かうべく、五月の早朝の冷気を頬に感じながらチャリを走らせていた。
と、その横を車が二台結構早いスピードで追い越してゆく。
「狭い道なのに危ないなぁ」と思いながら、時計を見た。
「げっ、やばい遅刻だ」
私は猛烈な勢いで自転車をこぎだした。
自慢ではないが私は中・高・大と、駅まで自転車で20分、という環境で育ったので全速でこぐと、
とろとろ走っているスクーターぐらいは追い越せる。(20キロ弱?)
その速度で駅に向かう通行人を次々と追い抜いていった。
「あっ、女子高生だ〜。追い越しちゃえ〜」
追い越しをかけたその時、とつぜん「ガンッ」という音とともに周囲の状況が目まぐるしく変わった。
何が起こったのか理解するのに数秒かかった。
とにかくこけたらしい。
気づいたらどうやら愛車とともに地面の上を猛烈な勢いでスライディングしている。
「これってどうやったら止まるのかな」
と場違いな・のほほんとした考えが頭をよぎる。
とにかくこけたらしい・・・
「ばっ、バイトに遅れるっっっ!」
「くっ、車にひかれる・・・」
「じょっ、女子高生は無事か?」